横になっているのに、眠れない夜がありました。
身体は疲れているのに、頭だけがずっと動いている感じ。
休もうとするほど、「ちゃんと休めていない自分」が気になって、余計に眠れなくなる。
そういう時期が、私にも長くありました。
セラピストとして働きながら、毎日誰かの身体をゆるめていたのに、自分自身は、全然ゆるめられていなかったと思います。
仕事が終わって家に帰っても、頭の中には、お客様のこと、明日の予定、やり残したこと。
身体は休んでいるはずなのに、頭だけはずっと働いている。
オフのスイッチを押す方法を、知らなかったのかもしれません。
今思えば、自律神経も乱れていたのかなと思います。
でも当時は、そんなこともよくわからなくて、ただ「疲れているのに眠れない」という感覚だけが続いていました。
前職では、身体全体の施術が中心で、頭は最後に少し触れるくらいでした。
首や肩、背中をほぐして、最後に少し頭をゆるめる。
それが普通だと思っていました。
でも、はじめてドライヘッドスパを受けたとき、施術中に、気づいたら眠っていました。
その感覚が、すごく印象に残っています。
強く揉まれたわけではないのに、頭に触れられているだけで、ふっと力が抜けていく感じ。
身体の施術とはまた違う、頭の奥のほうから静かになるような感覚がありました。
「頭をゆるめるって、こんなに休まるんだ」
そのとき、初めてちゃんとわかった気がします。
それまで毎日、人の身体に触れてきたのに、頭から休めることの大切さを、私はまだちゃんと知らなかったのかもしれません。
そこから、私のお手入れは少しずつ変わっていきました。
身体をたくさんほぐすことよりも、頭をやさしくゆるめて、安心して力が抜ける時間をつくること。
そのほうが、眠れない人には必要なのかもしれない。
そう思うようになりました。
そのとき、ふと母のことを思い出しました。
母も長い間、「眠れない」と言っていました。
「歳だから仕方ない」と言いながら、眠れない夜をひとりで抱えていたんだと思います。
試しに、母にも同じように頭のお手入れをしてみました。
施術中、母は眠りました。
その夜、「久しぶりによく眠れた」と言ってくれました。
そのとき、私の中で何かが決まった気がします。
眠れない人が、安心して身体を預けられる場所をつくりたい。
頑張らなくてもいい。
話さなくてもいい。
ただ温まって、ふっと力を抜けるような場所を。
Salon Naruは、そこから始まりました。
今でも、あの眠れなかった時期は、私の中にちゃんと残っています。
休みたいのに休めない感覚。
力を抜きたいのに、どうやって抜けばいいかわからない感覚。
だから、同じような状態で来てくださる方に触れるとき、「ここに来てくださってよかった」と思います。
眠れない夜が、少しでもやわらぎますように。
今日くらいは、何も考えずに休めますように。
そんな気持ちで、毎回お手入れをしています。
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